Imperceptible days 1502
思い出 金井直
            やはり私は立止まれない通行人であり
            一本の樹のそばを過ぎねばならぬ歩行者である
            そして あのものは私の背後にあって
            私とともに在ったあの場所にとどまり
            出発をせまられないものであり
            敷居の内側で時間を持たぬものであり
            私を去らせながら私を呼び
            私にだけ距離を与え
            引返せない私にいく度もふりかえさせる
            あのものの影をいかに捨てがたく私は負っていることか

