凱風舎
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冬の終り

 

 

 

 はねが ぬれるよ はくちょう
 みつめれば
 くだかれそうになりながら
 かすかに はねのおとが
 

 ゆめにぬれるよ はくちょう
 たれのゆめに みられている?

 

  ― 川崎洋 「はくちょう」 ― 

 

 朝から雪。
 窓の外、飛雪は空を行きなやみ、風に乱れて降り続いていた。

 二・二六の事件の朝を持ち出すまでもなく、二月の終り、三月の初めに首都圏に雪が降るのは当り前のことだ。
 ここに雪をもたらす低気圧が列島に沿って太平洋進むこと自体、西高東低の気圧配置が崩れ出したしるしなのだ。
 そのようにして冬は毎年最後のあいさつをして去ってゆく。
 春はもう隣だ。 

 夕方、雪は上がった。
 子どもたちがやって来る。
 受験生が勉強するのも今日が最後。
 明日は入学試験。
 最後の勉強を終えて帰ってゆく彼らの頭を撫でてやることしかもう私にやることはない。

 明日の入試が終わったら、みんな思いっきり遊べばいい。
 君たちの長かった冬ももう終わりだ。

 みんなもう眠ったろうか。
 今夜はいつも以上に静かな夜だ。